こないだの続き。書かないといけないようなのだ。少なくとも私の場合は。
では、どうぞ。
その日の夜、僕は不安に押しつぶされそうだった。
胸のあたりがもやもやして、体から気力が搾り取られ続けている感覚がした。
いじめのことについて、頭から離れない。
いじめから、学校から逃げてしまったことに対しての不安もある。
もう戻れないところに来た。そういう考えが僕を押しつぶした。
今戻っても、前よりひどくなるだろう。
ニュースを見ると、自らこの世を去った中学生のことをやっていた。
僕の母親は、明るくたくましく、そして面倒臭がりな人で、僕がこんな目にあっているなんて少しも思っていないだろう。
母が勘がいいところを見たこともない。
僕は、家族には知られたくないと思っていた。
明るい母を、暗い母にしたくない。
誰にも助けてもらえない。
だけど、悟がいることが僕の救いだ。
だから、僕も悟が一人ぼっちになるようなことはしたくない。
ニュースでは大人が助けられなかったのかと言う。
当然だ。
中学生は確かに子供かもしれないけれど、大人の目を盗んで何かをする知恵はもうある。
僕だって、死にたくないわけじゃない。
学校っていう狭い世界で生きていれば、逃げ道はそこしかないんじゃないかって気になってくる。
でも、僕は母に学校通える時期なんてあっという間に終わってしまうんだからと、いつも言われる。
だから、勉強しろって。
僕にとっては、その言葉は救いになっている。
公立の学校は、将来犯罪者になるような人間もひとまとめにされておかれている。
無法地帯に等しいのに、子供だから大丈夫なんて大人の思い込みである。
子供のいわゆる無邪気さが、深刻な残酷さに変わることも大人は知っているのか。
タンポポの花を首ちょんぱと言いながら、むしり取るような子供に、優しさを教えることを怠っていないだろうか。
布団に入っても、なかなか寝付けない。
いざ寝ても、悪夢を見る。
僕の精神状態は、こうやって語っているよりはるかに重い。
考えない。
ができない。
朝、携帯にメールがあった。
悟とどこで待ち合わせるか。
そのメールを見ただけで、僕の心は癒される。
ちゃんと勉強しないと。
そして、誰かに助けてもらわないと。
僕はそう考えた。
今日は隣町の図書館に行くことにした。
一縷の望みを持って。
ひらひらと手を振る悟に応えるように、僕も手を振った。
「なんで、今日は人目に付くところに行くの?」
「いつもの公園だと日に焼けるでしょ、悟がこれ以上日に焼けたら、暗いところで見えなくなるでしょ。」
「ならないよ。でも、見えなくなれればいいのにね。」
「ごめん。変なこと言って。そろそろ、勉強しないとやばいかと思って。」
「そっか。だよね。」
悟はふふっと笑った。
なんて可愛いんだろう。
そして、僕は、なんて嫌なことを言ってしまったんだろうって思った。
地黒の悟がそのことを言われて嫌な気分になってなければいいな。
僕はいつもうっかり口が滑って、嫌われる。
わかってるのに、滑ってしまう。
「悟、気にしないでね。」
「何が?」
「だから、気にしないでってば。」
「わかった。」
裏目裏目で本当に嫌になる。
「言い方、きつかったね。」
「大丈夫だよ。」
「本当にごめんね。」
「大丈夫。」
悟はいつも優しい。